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BMW「Panoramic Vision HUD」が生み出す新しい視界体験

車に搭載される

車幅全体に広がるパノラミックHUDの特徴

BMWが公開した「Panoramic Vision」は、フロントガラス全体を情報表示エリアとして活用する新しいHUDコンセプトです。ドライバーだけでなく、助手席側まで広がるワイドな映像表示が特徴で、これまでの小さな投影エリアに情報をまとめる従来型HUDとは大きく異なります。広い投影エリアにより、車内での情報の見え方が自然になり、必要なデータが視界の流れに合わせて配置されるため、わざわざ視線を大きく動かす必要がありません。これは、BMWが今後導入する次世代車両アーキテクチャ「Neue Klasse(ノイエ・クラッセ)」の UI コンセプトとしても大きく位置づけられています。

また、映像の明るさやコントラストは外光に合わせて自動調整されるため、昼夜を問わず認識しやすい点も特徴的です。ナビゲーションラインや速度情報など、走行に必要な要素だけでなく、周辺状況を読み取るための補助的な視覚情報も画面の端に広く配置できるため、視界に馴染む自然な情報提示が可能になります。

こうした広い提示領域は、単に情報量を増やすためではなく、「必要な情報が必要な場所に置かれる」設計を前提としており、ユーザー体験において大きな変化をもたらすと考えられます。

視認性と安全性を両立するための情報レイアウト

Panoramic Vision が重視しているのは、運転中の視線移動の最小化です。情報が車幅全体に広がっても、ドライバーの視界を邪魔しないよう、表示位置や明度が細かく制御されています。車両中央付近に速度や制限速度など最重要情報をまとめ、左右端にいくほど補助的なコンテンツを配置することで、ドライバーの集中度を妨げない仕組みです。

また、BMWは従来からHUD技術に力を入れており、表示がフロントガラスに浮かび上がるような自然な見え方を実現してきました。Panoramic Visionはその延長線上にある技術で、情報のレイヤー分けがより細かく行われ、運転に必須の要素とエンターテインメント領域を明確に分離できる点が安全性の向上につながっています。

加えて、車外の環境情報との連携も今後の方向性として期待されています。視界が悪い状況では周囲の車両や歩行者の情報を必要な範囲に重ねて表示するなど、AR要素を含む安全支援の進化が見込まれています。これらは視線を道路から外さないまま状況把握ができるというHUD本来の価値をより高める役割を担っています。

次世代車両で広がるユースケースと利用シーン

Panoramic Vision のユースケースは、運転支援だけに留まりません。広い表示領域を活かし、走行時・停車時それぞれに適した情報提示が可能です。走行中は、ナビゲーションの行先を道路方向に沿ってガイドラインとして表示したり、次に曲がる交差点を視界の中で自然に示したりと、より直感的なドライビングサポートが期待されています。

高速道路では、前方車両との車間距離や周囲の車線状況を視界の端に表示することで、ドライバーが状況を瞬時に判断しやすくなるシーンも想定されています。また、夜間や悪天候の際には視界補助として必要な情報が自動的に増減し、運転負荷を軽減する設計も考えられています。

停車中や充電中などは、車幅全体の表示を活かしたインターフェースとして活用する可能性もあります。車内エンターテインメントの表示や、車両ステータス確認、ルートプランニングなど、幅広いシーンで車内のデジタル体験を向上させる役割が期待されます。

BMWが示した Panoramic Vision の方向性は、HUDを必要情報の投影装置から、車内全体を包む情報空間へと進化させる大きな転換点といえるでしょう。